医療現場の異常性が暴走する『ゆいか』レビュー

1：診察室の二重性

病院の冷房が故障した診察室で、ゆいかは患者の腹痛を診察する。医療器具を手にした手が、ふと患者の乳房に触れる。検査用の綿棒が、唾液採取から乳首の触診へと用途を変える瞬間。患者の「嘘でも信じてくれる」という言葉が、医療行為の倫理線を溶かす。

ゆいかの思考：この手の温もりが、患者の信頼を裏切る証拠になるのか。医者としての使命と、この身体への欲望が衝突する

2：検査の過剰性

膣分泌液の採取が、医療行為から性的行為へと移行する過程。ニトリル手袋の着用が、感染症予防から性的接触への準備へと変容する。検査器具の二重性が、患者の無意識のうちに性的快感を引き起こす。

患者の思考：この医療行為が、実は自分の身体を刺激するための装置だと気付いた瞬間。診察台の上で、自分が「検体」でしかないと悟る

3：処置室の異常性

防護服姿の医者が、患者のカラダを触診する。酸素マスクの注入が、医療的必要性から性的興奮の手段へと転用される。患者の嘔吐反応が、医療的異常反応か性的快感かの境界を曖昧にする。

ゆいかの思考：この酸素チューブが、患者の呼吸を支えるのか、それとも性的興奮を高めるのか。医療器具の本来の用途を超えた使用に、自分がどう感じているのか

4：感染症の比喩的表現

百日咳の説明が、性的行為の比喩へと変容する。飛沫核の描写が、性的接触による感染リスクへと転用される。検査結果の伝達が、医療的安心感から性的解放感へと変化する過程。

患者の思考：この感染症の説明が、実は自分の身体に起こっている性的快感の比喩だと気付いた瞬間。医療用語が、性的行為の隠喩として機能している

5：医療行為の二重性

最終的に患者が痙攣する様子が、医療的異常反応か性的快感かの境界を曖昧にする。医療器具の使用が、患者の身体を治療するための手段か、性的快感を得るための道具かの両義性を強調する。

ゆいかの思考：この痙攣が、患者の身体の自然な反応なのか、それとも私の行為による結果なのか。医療者としての自覚と、この身体への欲望が、もはや区別できない

この作品は、医療現場の倫理線を越えた異常性を、感染症の比喩と医療器具の二重性で表現しています。患者の無意識のうちに性的快感を引き起こす過剰な医療行為が、医療者の倫理観と性的欲望の葛藤を浮き彫りにします。医療用語と性的行為の境界線が溶解する過程が、観る者に強い衝撃を与える作品構成となっています。